
油中水滴型エマルジョン(ムース化油)の生成メカニズムに関する詳細な研究は未だ兄当たらず、今後の研究の進展が期待されるところである。
2.1.2 処理薬剤の作用機構と選択
すでに記したようにムース化油は基本的には油を分散媒、水を分散相とした一種の安定なエマルジョンと考えられる。よって、このものを他の熱源なしに点火により自己燃焼させるためには、その構造を破壊して油水を分離し、油分を水の上に浮かせなくてはならない。そして、このためには分散媒と分散相の界面に働いて、その分散系を壊す処理薬剤の散布が必要となる。
その点、本焼却処理の技術的な展開においては、この処理薬剤の開発と選択が問題となるが、ここでは従来エマルジョンの破壊に利用されてきた乳化破壊剤(エマルジョンブレーカー)と名付けられた界面活性剤の適用を基本に考えた。ムース化油という極めて粘度が高く安定性の高いエマルジョンといえども、分散系としては普通の油中水滴型のエマルジョンと変わらないと考えたからにほかならない。
このような構造の判然としないエマルジョンの場合に分散媒と分散相の界面にどんな吸着相があり、また電気二重層の形成があるのかないのかは分からないが、界面における表面張力が支配的なことは、おそらく間違いなかろうということである。
それではこのための界面活性剤に要求される特性として何が重要なのだろう。破壊する相手が油と水という二つの成分を持つ以上、それぞれになじむ親油性(疎水性)と親水性の両方の性質を呈するための親油基と親水基を一つの分子の中に含まねばならず、それらの含有率のバランスが問題となる。この割合はしばしばHLBと呼ばれ、親水基と親油基の重量比で表される4)。
当然、これらの基の種類はいろいろあるから、その組合せによって界面活性剤は様々あるが、一般に親水基の水中での電離の形によって、陰イオン系、陽イオン系、非イオン系、両性系に分かれることは前にも触れた。市販の乳化破壊剤や油水分離用の界面活性剤は陰イオン系と非イオン系が主力であり、HLBとしては2から20ぐらいのものが多いように思われる。
ムース化油の破壊のためにどんな種類の、またどれぐらいのHLBの界面活性剤
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